最高感度の背面照射型sCMOS

Sona背面照射型sCMOSモデルの特長は、95%の量子効率(QE)と他社には類を見ない-45°Cの真空冷却です。
Sona 4.2B-11で使用されるタイプの、GPixel sCMOSセンサーの暗電流は、ZylaおよびNeo sCMOSカメラで使用するBAE/FairchildイメージングsCMOSセンサーと比べると比較的高いので、ノイズレベルを抑制するため、つまり、カメラの検出限界を最小限に抑えるためには、センサーの深冷処理がますます必要になります。Sonaは、独自の真空設計テクノロジーにより、内部ファンだけで熱を放散し、高精度と高安定度を保ちながら、-25°Cに熱電気的に冷却されます。さらに、Sonaは冷却水を使用して-45°Cに冷却できるので、競合製品に大きく差をつけます。
「背面照射型センサーは感度の高さが特に高く評価されています。このハイエンドテクノロジーから生まれた最高感度の製品を選ぶのは賢明な判断です。」
最高感度の背面照射型sCMOSカメラを装備すると、蛍光顕微鏡内で以下のような実用面での利点が多数実現されます。
- レーザ照度の減少 - 研究を通して細胞を生かしておく(つまり、光毒性作用を抑制する)ことができ、色素の光退色も抑制できます。
- 蛍光色素分子濃度の低下 - 生体試料の正確な生理機能を維持します。
- 露光時間の短縮 - プロセスを高速化できます。
- TIRFおよび共焦点微弱光モダリティによるS/N比の改善 - 焦点外のフォトンを除去する手法で写像性を強化します。

グロー抑制:センサーアレイ全体へのアクセス
GPixelのGSense400背面照射型センサーは、センサーの端でグローが生じることが広く知られています。このグローは疑似信号として現れ、露光の影響を受けます。このため、カメラメーカーは、これまで、センサーの実用領域を元の2048 × 2048の最大分解能より相当小さいアレイサイズに制限するか、またはカメラで許される最大露光時間に対して30ミリ秒という厳しい制限を課すことを余儀なくされていました。どちらにしても、視野または感度が制限されるため、さまざまなアプリケーションで性能と実用性が根本的に制限されます。
AndorはSona 4.2B-11で、このセンサーの問題を詳しく研究して特性を測定し、独自のグロー抑制テクノロジーを開発および導入することによってこの問題に対処しました。グロー抑制テクノロジーを利用した場合と利用しない場合のGSense 400背面照射型センサーの暗画像を下の図に示します。グロー抑制テクノロジーによる差は明白で、これによりAndorは露光時間を大幅に増加しながら2048 × 2048アレイ全体を活用できます。
低ノイズの相関マルチサンプリング
Sonaの16ビット高ダイナミックレンジモードは、スピード、最も広いダイナミックレンジ、および低ノイズレベルを兼ね備えており、ほとんどのアプリケーションにおいて、最も柔軟で、実用的なモードです。ただし、ノイズレベルを最小化する必要がある場合は、Sona 4.2B-6で使用されているGS2020BSIセンサーには低ノイズモードを備えています。このモードでは、フレームレートを犠牲にすることや、露光時間を増加させる必要なく低ノイズレベルを実現するために、相関マルチサンプリング(CMS)手法を使用します。このため、このモードは、照度を下げて短い露光時間を使用し、研究する細胞の生活現象を最小限にすることを目指す生細胞イメージングに適しています。細胞の生活現象は、2つのゲインチャンネルを使用してその出力を組み合わせることによって、低ノイズCMSモードで最小限に抑えることができます。このモードでは、ノイズは[Symbol]2だけ削減されます。これは約1.6e-~1.2e-の削減と同じです。Andor TechnologyがGSENSE2020BSIで測定した標準値は、これらの測定値と一致しています。このノイズ低減方法により「より鮮明な」画像を実現できます。2つのゲインチャンネルが16ビットレンジをカバーするために使用されるのではなく、12ビット出力として組み合わされるので、ダイナミックレンジは縮小されます。ただし、Sona 4.2B-6の利用可能ウェル深度はこのモードを使用する他のカメラのほぼ2倍で、はるかに大きいダイナミックレンジと使用方法の柔軟性が提供されます。また、このより広いレンジはより高い定量的精度で処理されます。
仕様* |
競合製品A |
Sona 4.2B-6 |
手法 |
CMS |
CMS |
ビット深度 |
12ビット |
12ビット |
最大フレームレート |
43 fps |
43 fps |
通常の読出ノイズ(中央値) |
1.6 |
1.6 |
CMSモードの読出ノイズ(中央値) |
1.2 |
1.2 |
ウェル深度** |
1000 |
2000 |
ダイナミックレンジ** |
833:1 |
1,500:1 |
定量的精度** |
>99.5% |
>99.7% |
GSENSE2020BSIセンサーを使用するカメラの相関マルチサンプリング低ノイズモード実装の比較。
* センサーメーカーが指定し、Andor Technologyが測定した2-CMSモード。
** カメラメーカーの公表値。
拡大カプラユニット(MCU)
Andorは、複数の一般的な種類の最新型研究用蛍光顕微鏡でこの大型センサーの視野全体を利用するために、Sona 4.2B-11と使用できるオプションの拡大カプラユニット(MCU)アクセサリを提供します。このアクセサリは、60倍および40倍の対物レンズと使用するためにSona 4.2B-11またはSona 2.0B-11を調節し、ナイキスト解像明瞭度も維持しながらサンプル上の視野を拡大するために使用できます。直径32mmのセンサーエリアで画像が2倍に拡大されるため、MCUは16mm以上の画像出力を提供するどのポートにも取り付けることができます。このことは、販売されている顕微鏡ポートのほぼ全てに該当します。画素がより小さいSona 4.2B-6のセンサーサイズでは、拡大する必要がなく、本来の状態で、標準の顕微鏡ポートに適合します。
詳細については、Andor拡大カプラユニットのスペックシートを参照してください。
拡張ダイナミックレンジと優れた線形性
sCMOSセンサーの革新的なデュアルアンプアーキテクチャでは、高ゲインアンプと低ゲインアンプを選択する必要がありません。つまり、高ゲイン(低ノイズ)アンプと低ゲイン(高容量)アンプの両方で同時に信号をサンプリングすることが可能です。こうして、最大ウェル深度とともにセンサーの最小ノイズを利用して、最大のダイナミックレンジを実現できます。結果として、このような比較的小さな画素設計では類をみない35,000:1のダイナミックレンジ(Sona 4.2B-6)と53,000:1のダイナミックレンジSona 4.2B-11)を実現しています。
さらに、カメラに搭載されたインテリジェンス機能が高度なリニアリティを提供するので、ダイナミックレンジ全体で99.7%を超える圧倒的な定量的測定精度を実現します。これは定量的測定に依存するアプリケーションが増えている現在、非常に便利です。また、イオンフラックス、FRET、発現解析などの局所濃度を信号強度によって表示する全アプリケーションで、信頼性を高めます。

高速フレームレート
Sonaの各モデルは、最大74fps、高帯域幅USB 3.0によるPCへのデータストリーミング、およびCoaXPressインタフェースを提供できます。このため、細胞運動性、イオンスラックス 、血流イメージングなどの高速アプリケーションに最適です。
関心領域(ROI)の選択により、ROIの高さだけでスケーリングを実行し、さらなる高速化を図ることもできます。これは、平滑筋細胞のカルシウムフラックスを測定するような、高速フレームレートで細長いサンプルをイメージングする場合に有用です。
SonaのsCMOSセンサーは高度に並列化された読み出しアーキテクチャを備えているため、高速データ読み出し速度と高フレームレートを容易に実現できます。すべてのカラムに独自のアンプとアナログ/デジタル変換器(ADC)があるため、全列が並列に読み出されます。
最大フレームレート(fps) |
Sona 4.2B-11 |
Sona 2.0B-11 |
ROIサイズ(W x H)) |
16ビット |
12ビット |
16ビット |
12ビット |
2048 x 2048 |
24 |
48 |
- |
- |
1608 x 1608 |
30 |
61 |
- |
- |
1400 x 1400 |
35 |
69 |
35 |
69 |
1200 x 1200 |
41 |
81 |
41 |
81 |
1024 x 1024 |
48 |
95 |
48 |
95 |
512 x 512 |
95 |
190 |
95 |
190 |
256 x 256 |
190 |
378 |
190 |
378 |
128 x 128 |
378 |
750 |
378 |
750 |
2048 x 8 |
5415 |
9747 |
- |
- |
1200 x 8 |
5415 |
9747 |
5415 |
9747 |
ローリングシャッタ
Sonaの各カメラはローリングシャッター露光メカニズムを使用しています。ローリングシャッターでは、基本的に、読み出しの「波」がセンサー、1番下の行を、Sona 4.2B-11の場合はセンサーの遠位端の行のおよそ21ms前に通り抜けて露光を開始するように、アレイのラインがそれぞれ異なるタイミングで露光されます。このモードでは、読み出しノイズが最小、フレームレートが最速となります。ローリングシャッタが唯一問題になるのは、領域内の比較的大きくて、動きの速い物体をイメージングする場合です。この場合、まずモーションブラーのリスクがあります。これは、動作速度を時間的にアンダーサンプリングするため、イメージング条件に影響を与えるおそれがあります。さらに、ローリングシャッタの空間歪みのおそれもあります。ただし、フレームレートで時間的にオーバーサンプリングされている速度で比較的小さい物体が動く場合のように、大多数の使用事例では、実際には歪みはあまり生じません。

他にローリングシャッタのマイナス面となりうるのは、露光される画像の各領域が他の領域と時間内に正確に相互に関連付けられない点です。領域間の関連付けは、アプリケーションによっては非常に重要な場合があります。たとえば、細胞を電気的に刺激して、刺激事象に関連するカルシウムスパークの開始を測定することが重要な場合は、ローリングシャッタを使用すべきではありません。この場合は、Zyla 5.5 およびNeo 5.5 sCMOSカメラが提供する、真の意味でのグローバルシャッタモードが必要です。
GPU Express
Andor GPU Expressライブラリは、カメラからCUDA対応NVidia GPU(Graphical Processing Unit)カードへのデータ転送を簡素化および最適化し、取得パイプラインの一部であるGPU処理の高速化を促進するために作られました。GPU ExpressはAndor sCMOSカメラ向けのSDK3に簡単に統合され、高帯域幅データフローの課題を管理するための使いやすいながら強力なソリューションを提供し、ライトシート顕微鏡、超解像顕微鏡、補償光学などのデータ集約型のアプリケーションに最適です。
- シンプルで最適化されたGPUデータ管理によって実現される利便性の強化
- 最適なデータスループットを保証
- 優れた文書と例に簡単にアクセス可能
疑似ノイズフィルタ
AndorのSona sCMOSカメラは、高ノイズ画素の発生頻度を減らすためにリアルタイムで動作する内蔵FPGAフィルタを標準装備しています。このリアルタイムフィルタは、フィルタがない状態では画像内に疑似「ごま塩」スパイクノイズとして現れる画素に対して補正を行います。
このようなノイズの多い画素は見た目では、EMCCDカメラ内のCIC(Clock Induced Charge)スパイクノイズの状況と似ています。それは、センサーの大部分でノイズが大幅に低減されているため、見た目が問題になる疑似的にノイズが多い画素はごく少ないからです。使用されるフィルタは、このような高ノイズ画素を動的に特定し、フレームレートとは無関係に隣接する画素の平均値と置き換えます。
ハードウェアタイムスタンプ
Sonaプラットフォームは、最高25nsの精度で画像ごとにタイムスタンプを生成できます。フレーム時間の正確な知識が時間的動的解析に影響する場合、精密なタイムスタンプが重要になりえます。特にコンピュータとインタフェースのレイテンシを考慮する必要がある高速な事象で重要です。分野としては、シグナリングカスケード、小胞輸送、脂質動態、シナプスリモデリング、光遺伝学や光生理学を使用した活動電位研究などがあります。タイムスタンプは、拡散速度の概算を容易にするため、FRAP解析にも有用です。